秋のにおい

tsukihoshi2004-09-29

朝起きて友人がくれたメールを読んでいたら無性に吉本ばななを読みたくなり、本棚から『ひな菊の人生』を引っぱり出してきて読んだ。私はばなちゃんの作品は基本的にそれほど好きじゃないのだけど、これは奈良美智とのコラボなのと装丁があまりにキュート(小説は黄色の、画集は赤のびろうど張り。外箱は鮮やかなスカイブルー)なので思わず買ってしまったのです。少なくとも3年は手を触れてなかったんだけど、あらためて読み返したら深く印象に残る箇所がたくさんあった。新鮮な感動。もしかしたら3年のうちに私のものの感じ方が変わったところも、あるのかもしれない。今まで読んだばなちゃん作品の中ではかなり好きな部類に入ると思う。
今日は体がだいぶラクになったので病院へ弟の見舞いに行った。うちを一歩出た途端に金木犀の甘い香りに包まれる。うちは国道沿いだし、周りを見回しても香りの出所は見当たらないのに、吸い込む空気の中にその甘い分子の存在がくっきりと感じられる。そして、ああ確かに秋が来たんだなと思う。私はいつも新しい季節の到来をにおいで感じとる人間だから。
病院では4時間近く弟と過ごす。お腹すいてるのにまだゴハンの許可が出ていないので見ていて不憫になる。ずっと点滴し続けてるから腕も痛くなってきたらしい。そういえば私も数年前の秋の初めに、ちょうど彼と同じような思いを抱えつつ、ばなちゃんの本を読んだりしながら入院生活を送っていたことを思い出した。人が生きていく時間って、算数の授業で習ったようなリニアなものでは決してなくて、行ったり来たり、重なったり離れたり渦を巻いたりしながら流れていくものなのだなと、あらためて思った。