フォーレ、その優しく豊かな響き

tsukihoshi2004-02-05

「冬は朝。」とはよく言ったものですね。寒さも心地よい。(今はすでに早朝じゃないけど。)


今日は仕事は休み。
昨日の日記を読み返して「う〜む」と思考モードに入っていたら、NHK-FMからフォーレのピアノ連弾「ドリー組曲」が流れてきました。
ああ、私が愛してやまないこの曲。


私がこの魅力的な曲に出会ったのは中3の頃でした。
小さい頃から(実は3歳から)ピアノのレッスンを受け続けてきたにもかかわらず、練習とレッスンが大嫌いだった私は ピアノを弾くことに対してあまり興味や情熱を持つことができずにいました。
レッスン曲もオーソドックスにソナチネソナタが中心だったのですが、私はモーツァルトベートーヴェンの曲を弾いていてもあまり面白いと感じませんでした。心を動かされることもほとんどなかった。
そんなやる気のない私の様子を見て「この子には音大を目指そうなんてつもりはさらさらないらしい」と悟った先生は、それまでやっていたハノンとソナチネ集・ソナタ集はもう今後レッスンに持ってこなくてよいと言い、代わりにフォーレの連弾をやろうと言われました。技術的な難易度は落ちるけれど、きっとあなたは気に入ると思う、と。(今思えばこれは先生の卓見でした。)

このようにして私はフォーレの「ドリー組曲」に出会ったのです。
そしてその斬新な和声の響きと、やわらかくて少し湿ったあたたかな音の手触りに私は驚き、非常に強く心を動かされました。それは今まで全く聞いたことのない未知の響きで、鍵盤を触り始めてから12年目にして初めて 私はピアノを弾くことに心からの喜びを感じたのでした。その時の幸福な衝撃を私は今でもよく覚えています。

この体験をきっかけにして、私はドビュッシーフォーレプーランクといった作曲家のピアノ曲を好んで聴いたり弾いたりするようになりました。とは言っても弾けるのはせいぜいドビュッシーの「子供の領分」レベルまで、ですけどね。

「ドリー」とはフォーレが当時親しくしていた知人の幼い娘エレーヌの愛称で、曲はその誕生日を祝うために毎年1曲ずつ作られ 進呈されていったものなのだそうです。素敵ですよね?
連弾なので2人で弾くものなのですが、上のパートは譜面的には簡単なので しばらくピアノから離れていた方でも容易に弾けると思います。
もし機会があれば、恋人と、友人と、またはご家族と一緒に弾いてみて下さい。
考えてみると、1つの楽器を2人で共有して弾く経験ってふだん音楽をやっている人にしても非常に稀ですよね。実際にやってみると、これは実にエキサイティングかつ独特なものです。一緒に弾く相手との深いつながりを感じることができます。うまく言えませんが、本当に独特の味わいのある作業です。


もしも、万が一、私がこの先自分の子供を持つことがあるとしたら、その子とこの曲を連弾で弾けたらいいなと思います。それが私のセンチメンタルな願いです。ばかばかしいとは分かっていても。


朝食にいい時間になってきました。近所のケーキ屋さんでぱりぱりのコルネを買ってきます。私は私の、今の、現実を生きていかなければね。それなりに楽しみながら。