茉莉とクライスラー

引き続き、森茉莉『マリアの空想旅行』を読む。
茉莉がクライスラーの演奏会に行ったという記述があって驚いた。クライスラーの生演奏に触れた人がついこの間まで生きていたなんて! 歴史は続いているのだ、と今さらながら思う。
演奏そのものはもちろんたいへん素晴らしかったのだが、とにかく「弾き出した初めの一音の衝撃が忘れられない」とあった。クライスラーの音はいまや録音からしか知ることはできないが、それでもここで茉莉が言おうとしていることはすごくよく分かる。森茉莉というのはつくづく感性が鋭い人だったのだな、と思う。