ちょっとええ話

zoot32さんに触発されて。id:zoot32:20041029
私も似たような経験あります。この春まで住んでいた関西のある街にて。その街は関西エリアでもかなりガラの悪いイメージのある場所なんですが実際にガラ悪くて、具体的な不利益も幾度となく被りました。そんな街であったちょっとええ話パート1。ある日私はチャリで3分の所にあるスーパーへ買物に行きました。カバンを持って出るのが面倒だったので、四つ折りの財布をパンツのサイドポケットに突っ込んで出発。で、買い物を済ませてアパートまで戻ってきてポケットから鍵を出そうとして、あるべきところにあるべきものがないことに気づいた。ない。ないないないない財布がない。顔面蒼白。だって現金はおろかクレジットカードに銀行や郵貯のカード、免許証に至るまでおよそ大切なもんが全部入ってる財布なんだもん。慌てて買物袋の中やらチャリのカゴやらを探しまくるが、ない。これはどっかで落としたに違いないと思い、まさに目を皿にしながらスーパーまでの道のりを探し歩くけど、ない。丸っきり全然、影も形もない。スーパーのサービスカウンターに届けられていることに一縷の望みを託して駆け寄ってみたけれど、お姉さんは気の毒そうに首を振る。ない。最後の望みも打ち砕かれてしばしショックで固まる。「警察には電話されました?」というお姉さんの言葉に我に返り、初めてそういう選択肢があることに気づいた。携帯はアパートに置いてきてたのでまた慌ててうちへ引き返す。部屋に入ってテーブルの上の携帯を取ると、着信履歴の表示が。どこかと思って見てみたら、なんと近所の派出所から(仕事柄 電話帳に登録していた)。即座に折り返し電話してみると、「お財布届いてるんで取りに来てください」とのこと。!!イエッス!!やった!!良かった!!という喜びと安堵感と、何故に警察は私の携帯番号が分かったのか?という疑問を抱えながら派出所へ向かった。若干緊張して入った派出所では財布の特徴やら私のことやらを訊かれ、所持金も自宅の住所も間違える興奮気味の私は警察の人に「落ち着いて。」と言われつつ、やっと懐かしの我が財布と対面できました。なくしたのはわずか数10分前なのに、100年ぶりの再会みたいに思える。人目を憚らずほおずりしたい衝動を必死で抑える。警察はその日たまたま私が財布の中に入れてた振込用紙に書かれた携帯番号を見て、電話をくれたらしい。もしその紙を入れてなければ、私はその後はるかに長い時間にわたって不安と苦悶に苛まれることになったはずだ。考えただけでぞっとする。財布の中身は、土地も土地なので現金ゼロくらいの事態は覚悟してたのに、奇跡的に何1つなくなってなかった。そしてさらに、財布を届けてくれた親切な方は、謝礼は要らないからと言って名前も残さず帰って行かれたということだった。「絶対にお礼をしようと思ってたんです」と言うと、警察の人に「ではその感謝の気持ちは、これから誰か他の困っている方のために活かしてください。きっと届けてくださった方もあなたがそうすることを望まれると思いますよ」と言われた。私は小心だからもともとあまり悪事を働くには向いてないし、すごいアホなので時にはどんなに努力しても誰かや何かにとてつもなく悪い影響を及ぼしてしまうこともあると思うけど、少なくとも故意に誰かや何かを傷つけたり損なわせたり貶めたりすることはしないようにしよう。と、その日財布を抱えて帰る道すがら誓ったのでした。
えーと、ずいぶん長くなったのでパート2は手短にいきます。もう1つのええ話は、これまた同じ街で 道端に落とした私の携帯を親切なおばちゃんが拾ってくださって、メモリを見てわざわざ私の実家にその旨を電話してくださり、仕事で常識的な時間に取りに伺えない私のために丸2日もそのまま保管してくださった。というものです。お宅まで取りに伺ってとにかくお礼を言いまくる私に、「なにゆうてんのー、うちは当たり前のことしただけやー。こういうもんはお互い様やしなあ」とおばちゃん。「もおやめてや、そんなんもらわれへんって」と言ってどうしても受け取ってくれないおばちゃんに半ば無理やり菓子折をお渡しして、お宅を後にしたのでした。
あまりに単純で非科学的かもしれませんが、私もやはり善は連鎖すると思います。誰かが人知れず困っている人に善なるものを送る。そしてそれを受け取った人は、いつの日か別の誰か困っている人に善なるものを送る。そしてまたそれを受け取った人が・・・という具合にして、世の中を善が巡り巡っていく。1人の受け持つ距離は短いけど、その分多くの人にパスが回ってくる。そんな連環の小さな一部分になれたら、こんな嬉しいことはないと思います。