坂本龍一「CHASM」体験(ケース1:初期反応としての)

教授曰く、今回の「CHASM」では「それら(="生っぽいものとエレクトロニックなもの、あるいはクラシカルなものとそうでないもの")を並列するのではなく、どうやって一つの音楽の中で融合させるのか」を自らの課題として取り組んだのだそうだ。
そして彼のその言葉通り、今回のアルバムでは収録曲を単純に「アコースティック系」「電気系」などと区分することはできない(し、やっても意味がない)。
これは前作のアルバム「SMOOCHY」との最大の違いの1つである。
また、「SMOOCHY」以後9年間に坂本龍一がアコースティック系(「BTTB」「LIFE」etc.)とエレクトロニック系(「vrioon」etc.)という2つのタイプに「分けて提出」し続けてきたという経緯を考えると、今回の「CHASM」の仕事は彼にとって相当に大きな変革を迫られるものであり、と同時に彼の音楽家としてのあり方の本質に関わる仕事だったのではないかと思う。


だから、「CHASM」では静謐な曲の中にも「ぴきっ」「ぎゅいん」「びびび」といったnoisyな電子音がふんだんに織り込まれているし、短いモティーフ(それはノイズだったり、ドラムやピアノの音だったり)が複雑な電気処理によって まさに前代未聞の音楽を作り上げていたりする。
かなり面白いです。
でも、電気的な音楽やノイズに馴染みが薄い私にとっては、正直ちょっと戸惑ってしまうところもある。
今のところは1曲目「undercooled」がいちばん気に入っています。これから各曲に対する思いはどんどん変わっていくと思うけれどね。