セーヌの川辺

セーヌの川辺

セーヌの川辺

私は池澤夏樹のエッセイは「南洋もの」が苦手でしばらく読んでいなかった。ジャック・マイヨールと一緒にイルカやクジラの側で潜ってどうのこうのとか、沖縄のなんとか言う食べ物がうまくてどうたらとか、そんなふうに無邪気に書かれてもなあ…と困惑していた。文章もなまあたたかい感じでどうしても好きになれなかった。
だが久々に読んだこの『セーヌの川辺』は良かった。まず文体の感触が冷たくて引き締まっていて清潔。そして過度に感覚や感情に流れない科学者の目線。移住したフランスでの生活からうまれる様々な問いと推論。
1つ前のフランス移住後エッセイ「異国の客」も読んでみよう。