くりかえし聴く、くりかえし読む

音楽批評の本はほとんど読んだことがなかったのだが、面白いものなんだなと知った。私は10代の初めからずっと自分が演奏することに夢中だったから、文章を通じて音楽を楽しむという発想がなかったが、事情により演奏ができなくなり、演奏会にもほぼ行けなくなり、それで最近やっと録音を聴く楽しみを知り初めた。そしてそうした流れの中で、批評を読む喜びもこのたび知ることができた。
この本を読んで、やっぱりクラシック音楽っていいよなあ、私は大好きなんだなと、バカみたいに素直に思った。自分にとってとても大切なものなのだということを、当たり前で身近すぎて自分では意識しにくくなっていたその大切さ、切実さを、文章を通じてあらためてじっくり噛みしめた。
楽器を弾きたい、ステージに復帰したい。心からそう思う。でも、音楽の楽しみ方というのは何もそれだけじゃない。舞台衣装を着てスポットライトを浴びて拍手をもらうことが音楽なのではない(当たり前だが)。生きていれば様々な時を経る。その時どきに応じて、その時に合う仕方で、音楽とつき合い音楽を味わうことができればそれで充分幸せなのではないか、と思えるようになってきた。
帰省したら衛星放送で何か良い演奏会を見れるかもしれない。楽しみだ。